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奥村幸治先生の講演を聴いてきました

奥村幸治先生の講演を聴いてきました2016/04/05

2月3日(水)に都内で弊社お得意様ご主催の講演会で奥村幸治先生「プロ野球チームに見る強い組織のつくり方と夢を実現させるためのセルフマネジメント」と題しての講演を聴いてきました。

決して試合に出ることのないバッティングピッチャーを4年間。
プロ野球の経験なし。
身長168cmと小柄、教え子のマー君(田中将大投手)は188cm、体重95kg。

7球団のテストを受け、オリックスにバッティングピッチャーの枠なら、と採用してもらった。

バッターに気持ち良く打たせるのが仕事。
4~10月のシーズン中にバッターに投げる時間は1日20分。
1分間に6球以上、毎日150球以上投げる。
これで年俸は少なくて600万円、ジャイアンツは1000万円以上とも。

翌年1つ年下のイチロー選手が入団してきた
彼との出会いがなければ今の講演をさせて頂いている自分は無い。
昨年は160回の講演。

入団当時は土井正三監督。
プロ野球選手たるもの「自覚と責任」と言われ、移動中は決められたスーツにネクタイ、新聞、ウォークマン禁止、門限もあり締め付けが厳しかった。
翌年交代し、仰木彬監督に。
阪神大震災の年の優勝監督でもある。

イチロー選手は土井監督の時にスタートは一軍だったがバットのグリップエンドに小指を引っ掛けて練習していた時、とても有名なバッティングコーチが「その握り方をしていてデッドボールが当たると骨折するよ、やめなさい」と。
実績が全く無いイチロー選手が「こんなとこにデッドボール当たるなんてどん臭いですよね、当たらなければいいじゃないですか」と言い返したらたったの4日で二軍に落とされた。
イチロー選手はこの時泣いて泣いて泣き崩れていた。
私の所へ来て「このバットの持ち方には理由があります。決して体格では恵まれていません。バッターとして成功するためにはバットを握った時、小指に一番力が入ることがすごく大切なんですよね。でも監督もコーチも全く聞いてくれなかったんです。最初から否定しかなかったんです。ホント悔しいです。二軍に行ってきます。」と、二軍へ行っても全く変えず次々と記録を塗り替えた。
今も変わっていない。
翌年仰木監督に代わりキャンプ初日のミーティングで「君たちはプロ野球選手、自覚、責任を持って行動して下さい。」続けて「プロ野球選手はグラウンドで結果を出すこと、これが全て。それができれば一切何も言わない。」と。
さらに移動中の服装も新聞もウォークマンも全て自由、門限もなしに。

この年パンチ佐藤氏に銀座に飲みに連れて行ってもらい宿舎へ戻ると午前2時過ぎ。
ロビーに仰木監督、さすがに叱られるかと思いきや我々に「おはよう、お前らも今帰ってきたのか?俺もや。今日の試合頑張ってくれな、おやすみ」、
そしてパンチさんに「これでわかったろ、門限がない理由、ワシが飲めんようになるからや。ワシが守れんのに選手に守れって言うのおかしいやろ。」
その監督が翌朝一番にグラウンドで黙々とランニングをしていた。
それを毎日続けていた。

キャンプ初日、バッティング練習を終えたイチロー選手を呼び仰木監督は「イチロー、今年一年何があってもお前を一番バッターで使い続けるからね。」と言った
イチロー選手はこの年20歳で210本という日本最多安打を達成
20歳から26歳まで日本で7年連続首位打者、27歳から37歳までメジャーリーグで10年連続200本安打達成、日米通算4000本安打も達成。
仰木監督と出会っていなければ今のイチロー選手はないと思う。
210本の日本記録を昨年西武ライオンズの秋山選手が216本で更新したが試合数は143試合、イチロー選手の時は130試合。
もし当時143試合あればこの年の打率が3割8分7厘だったのでおそらく230本くらいは打っていたと思う。

この後阪神、西武へと移籍。
奥村先生が見た弱いチーム、強いチームの特徴と理由。

NYメッツのキャンプで野茂さんと吉井さんにメジャーと日本の違いを訊ねた。
「コーチングの違い」
日本は「与える」、メジャーは「聞き出す」
選手は自分の気持ちや考えをきちんと伝えなければならないから大変。
自己主張が無ければ世界で通用しない。
野茂投手は英語が全然喋れなかった頃、自分で目標を立てそれをクリアしようと毎日努力していたら、監督、コーチが「野茂、君がやり続けていることは素晴らしい。もっと続けなさい。ただこうすればさらに良くなるよ。」と声を掛けてくれた。
彼らは絶妙な距離感で選手の気持ちをちゃんと考え行動していれば言葉で発しなくとも見抜いてくれ、気付いてくれる。
逆も真。

メジャーの選手たちが言った成功の法則
「誰よりも強い身体を作れ」
それがないと他人よりも努力ができない。
努力ができなければ自分の技術は上がらない。
体調管理を万全にしないと良い結果を出し続けることはできない。

まさしくこれを一貫してやっているのがイチロー選手。
ビールのCMにも出ていてビールが大好き。
でもどんなにお酒を飲んでもビールとワイン一杯ずつ。
それ以上飲んでいる所を見たことが無い。

そしてもう一つ、「運を掴め」
いっぺんに凄い運は巡ってこない、少しずつ。
人として当たり前のことを当たり前にすると絶対に自分に良い運が入って来る。
「君はどんな選手を応援する?例えばすごく野球が上手い、でも人としていい加減な選手と野球は全然上手くないけど人として素晴らしい選手」と訊かれ
「後者」と答えると
「そうだろ、この質問は誰にしても皆そうやって答える。このことに気付かなければ絶対に良い運は巡ってこない。良い人間になろうよ。」と言われた。
「メジャーリーグの選手は毎日どんなことを心掛けているの?」と訊くと
「僕たちは当然お金を持っているからできることかもしれないけど、貧しい国の人たちのために支援したり基金したりということをメジャーリーガー全員がやっている。こういう活動をするとファンの皆さんが素晴らしい、応援したいと言ってくれる。好きな野球をやっていても今日は行きたくない、休みたい、時にはやめたいと思うことがたくさんある。でもこんな時にファンの皆さんがいつも「頑張れ」と声を掛けてくれると頑張ろうという気持ちにさせてくれる。感謝なんだよ。」

母国が苦難に陥った時に飛行機をチャーターし救援物資を届けようと帰国の途中に墜落し、亡くなったロベルト・クレメンテというメジャーリーガーがいた。
その後「彼こそメジャーリーガーの誇り」と讃えられ、メジャーリーガー全選手が最も欲しがる「ロベルト・クレメンテ賞」が創設された。

東日本大震災の時にイチロー選手は一億円寄付した。

そのイチロー選手が日々考えていること、それは「心技体」のバランス。
そのための「プラス思考」
早く球場に行きたい、早くバットを持ちたい、早く試合したいというような。

20歳時のイチロー選手の「ベテランか!」とツッコみたくなる“目標哲学”
イチロー選手のルーティンあれこれ。
絶対に誰にも負けない努力は何だったか?
簡単なことほど難しい。
こうやろうと決めたことはずっと続ける。
イチロー選手は努力を継続する天才

日本ハムファイターズで引退したイチロー選手と同い年の稲葉篤紀氏から聞いた2009年WBCでのエピソード。
イチロー選手がこのWBCでずっと活躍できてないかったから本人はさぞ辛かっただろうと思う。
そんな中で自分よりも年下の選手たちを毎日ご飯に連れて行きチームをまとめるために先頭に立って行動していた。
稲葉氏は「俺は無理だった、自分のことで精一杯だった。」
でも、察して余りあるイチロー選手はそうしていた。
そして迎えた韓国との決勝戦、3対3の同点で迎えた10回表、2アウトランナー2塁3塁、イチロー選手がバッターボックスに向かう、日本のベンチの若い選手たちは皆「イチローさんお願い、ヒット打って」という気持ちになった、と。
そしてファウルで粘ったカウント2-2からの8球目をセンター前2点タイムリーヒットを打ち日本が優勝した試合のこのイチロー選手の最後のヒットは「イチローが打ったヒットではない。みんなの思いが打たせたヒットだった。」と稲葉氏が言った。
そして「みんなをそんな思いにさせたのは、どれだけ自分が辛くてもチームをまとめるために先頭に立って行動しているイチローの姿があったから、この姿を見た時にこれが世界のイチローなんだと本気で感じさせられた。」とも。

星野仙一氏の話
毎年アメリカで開催されている中学1年生の野球の世界大会。
9年続けて毎年1500万円の支援をして下さっている。
この支援がなければ日本の子供たちは世界大会の経験はできなかった。

期間中子供たちは現地のお宅にホームステイさせてもらう。
そして2週間過ごし帰国するときにアメリカの両親との涙の別れがある。
「奥村、この出会いが大事なんや、自覚、責任が少しでも芽生えてくれたらそれでいい。」と。

田中将大投手、24連勝という日本記録を持っている。
達成できた理由がある。
星野監督のことが大好きで、自分はエースだから負ける訳にはいかない。
だから日本シリーズで160球投げた翌日にマウンドに立てる。
自分のためじゃなく人のためだから。

なぜ駒大苫小牧高校に行くことになったのか?
決めるに足る理由がそこにあった。
ここはぜひ講演で聴いて下さい。

マー君はヤンキースに入団が決まった時に決して良いイメージばかりを持って渡米した訳ではなかった。
きっとこういうことで困るだろうとマイナスのイメージを持ちそれに対しどう対処して解決していけば良いかを考えていたから、悪い時でも自分を見失うことなく平常心でいられる。
だから悪い時に悪いとならないから信頼される。

東京モーターショーでのエピソード
豊田章男社長とイチロー選手の対談。
豊田章男社長「私はイチロー選手が大好きです。どんな状況の中でもグローブ、スパイクを磨くことを怠りません。どれだけ悪い結果でも愚痴をこぼしません。そんな前向きな姿勢のイチロー選手が大好きです。今自動車業界は苦しいです。若い人たちが車に乗らなくなっています。プリウスみたいな車や水素の車が生まれると思っていましたか?今度は自動運転です。非常識が常識になります。そこには挑戦する気持ちがあるんです。前向きな気持ちがあるからこそ非常識が常識に変わるんです。イチロー選手は42歳です。あれだけの動きができる、凄いです、ある意味非常識です。でも常識に変えることができる、そこには彼の前向きな挑戦する姿があるからなんですね。
イチロー選手「成長し続けるということは前進と後退を一歩ずつ繰り返しながら成長します。つまり後退も成長に向けた大切なステップです。」
イチロー選手の現状を象徴する言葉。
この3年ぐらいはなかなか試合に出られない状況が続いている。
でもそれを受け入れる。
マーリンズの球団代表は「イチロー選手終身雇用。彼はヒットを打つだけが素晴らしいのではない。彼の行動全てが若い選手たちの模範になるんです。」と。
そこに気付いてもらえなければきっと結果ばかり求められる。
するともう要らないとなる。
でもそこに気付いてくれるからこそイチロー選手も頑張れる。
球団と本当に良い関係だと思う。

チーム(組織)のあるべき姿、コミュニケーションの取り方、モチベーションの上げ方、リーダーシップの取り方などプロ野球というフィルターを通して大変参考になる講演だった。
イチロー選手のように「早く会社に行きたい」「早く仕事をしたい」と本気で思ってくれる社員が欲しいと聴かれた社長さん方皆さん思われたことでしょう。
もちろんMe toですが。

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