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飯田泰之先生の講演を聴いてきました

飯田泰之先生の講演を聴いてきました2015/12/09

11月5日(木)に都内で弊社の長きにわたってのお得意様ご主催の講演会で飯田泰之先生「アベノミクスの行方 ~経済循環の変化と資産市場~」と題しての講演を聴いてきました。

官庁や金融機関出身のエコノミストの景気判断は基準時点と比べて良いか悪いか、上向いているか下に下がっているかという方向性で行う。
一方大学院などで学位などを取得した経済学者は「絶対水準」で考え、それを経済状態が上回っている(景気が良い)か下回っている(景気が悪い)かで判断する。

「絶対水準」で判断する講師曰く、これで判断すれば方向性としては改善しているが現在の景気は悪いということになる。
「景気が悪い」というのは生産能力より需要が下回っている状態。
これが経済学者の考える所の絶対的な水準で見た不況。

旧3本の矢についての解説。

今回(2013年~)の景気回復は前回(2003年~2007年)と比べると地域間の格差が非常に小さい。
さらに企業規模間のバラツキも小さい。
なぜなのかという詳細分析。

リフレ政策とは何か。

どんなに素晴らしい経済政策でも一貫性、継続性、国民の信頼が無いと機能しない。
逆に大した経済政策でなくても一貫性、継続性、国民の信頼が得られれば効果が出る。
政権の安定性が高いので現在の状態はこれに該当する。

飯田先生は「デフレからの完全脱却は、来年は難しい」と。
一見悲観的に聞こえるかもしれないが日本経済の潜在能力が高いが故、実はそうではない。

追加の金融緩和政策についての候補案と解説。

消費増税が予定通り2017年4月から行われるかどうかは現時点でははっきりしない。
本来首相、官房長官共に消費増税には慎重。
個人的にもその考え方には賛成。
そもそも現在の好景気は消費が増えたことに起因するので増税で足元を冷やすようなことは止めるべき。
もし増税不可避なら大幅な財政政策を行わなければいけない。

軽減税率の話にも言及。

経済が成長し税収が自然に増えていくようになることがベスト。
これができれば財政再建はそれほど難しくない。
理想の経済成長は需要と供給が手と手を取り合って伸びていく形。

資産について。

主観価値説と客観価値説
食べ放題で元が取れたかどうか、いくら分食べたから得した、損したと考える人は後者。
一方自分が払った金額分は満足したのだから、原価がいくらでも気にしないと考える人は前者。

現在の日本において「成長の種」はどこにあるか?
成長は特許や発明などの技術力は1/3、残りの2/3は人間の能力、言い換えれば人の労働力による。
教育により人間の能力が向上する訳ではない。
座学で職業上の能力、つまり仕事が出来るようにはならない。
仕事の中でしか仕事が出来るようになる、能力が向上することはない。

大きな声では言えないが、ある調査では取締役に占めるMBAホルダーが多ければ多いほど業績が悪いという結果も出ている。

人の能力を高めるのは以下の3つ

①「慣れる成長(実際に仕事をすること)」
 トランザクティブ・メモリーが重要。
 自分が何を知っていて何が出来るかではなく、これはAさんが得意、こういうことはBさんがよく知っているというように、誰が何を知っていて何が出来るかを知っていること。
 つまり同じ会社に長く勤めることでトランザクティブ・メモリーが生まれる。
 これからはいかにトランザクティブ・メモリーを持った人が辞めずにその人を活用できるかが企業の成長、繁栄のカギとなる。
②「動く成長(人が移動すること)」
例えば中国経済について。
中国の内陸部の小都市において極端な人手不足が起きていたら中国の高度成長の終わりのサイン。
なぜなら内陸部から都市部へ人が動くことが成長の証だから。
日本で大企業は財政的にも余裕があるために優秀な人材をそれほどその人の能力を発揮できない部署で抱え込んでしまっている場合が往々にしてある。
そういう人材を中堅・中小企業で活用し活躍させることができたら大都市から地方へ移動し成長へと繋がる。
雇用政策がカギ。
③「集まる成長(人が集まること)」
 利ざやを生み出すのはアイデア。
 iPodやiPhoneが出てきた時日本のメーカーの技術者は驚いた。
 新しい技術が一つも無いことに。
ただしスタイルが、アイデアが良かった。
提案するライフスタイルに先進性があった。
 こういうアイデアは下手な鉄砲数撃ちゃ当たる方式以外出てこない。
人と人とが出会って何となくコミュニケーションを取っていくとその中から偶然に生まれるのがアイデア。
従ってある程度人口が集中している地域は必要。

これら3つの成長を促す人の能力を高めるキーが今後の日本経済をより良くしていく為に必要となってくるだろう。

飯田先生はとても柔和でニコニコされ、控室でも講演時間ギリギリまで主催者の幹部の方々と歓談、情報交換され終始和やかに過ごされておられました。

経済というわかりにくいものをわかり易く解説して下さり、決して日本経済の将来は悲観的ではなく明るいものにできる高い潜在能力を持っている、といった安心感を与えて下さる講演です。

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