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池谷裕二先生の講演を聴いてきました

池谷裕二先生の講演を聴いてきました2016/03/22

1月22日(金)に都内で弊社のお客様ご主催講演会で池谷裕二先生「脳を知って脳を生かす」というテーマでの講演を聴いてきました。

普段は実験中心の生活で今日が今年初めての講演会。
忙しくてなかなか講演ができないそうで弊社含めごくわずかの仲介業者からの依頼のみ請けている。
「脳の専門家、言い換えれば「脳バカ」で元来人前で話すのが苦手、講演も下手」と謙遜。(実は抜群に上手いしとても面白い)

大まかに「やる気」と「記憶」と「遺伝子」の3つのパートに分けての話。

「心」は「意識」と「無意識」
「無意識」が大切
「意識」は氷山の一角、その下に広大な「無意識」が広がっているという言い方をしていた人がかつてはいた。
が、今は氷山の一角ですらない。

では「意識」とは何か?それは「飾り」、一見派手で目立つ。
しかし本質である「無意識」を全く反映していない
それどころか「無意識」からすると邪魔な取って捨てたい飾りという程度の価値しかない。
(まるで禅問答のようだがとても興味深い)

目(脳)の錯覚例を列挙し実は「意識」が真実を反映しないことを証明。

ある映像を見せ指示に従うよう伝え、『握れ』という文字が出たら握って握力測定をするという実験。
この『握れ』という文字の前に1コマだけ『ガンバレ』というサブリミナル映像(実際には見えない)を入れたものとそうでないものとでは握る力は全然違う。
前者の方が2倍くらい強くなる。
被験者に訊くとなぜだかわからないが時々グッと強く握ってしまうと答える。
このことから「無意識」は素直で敏感なことがわかる。

また、一般のドライバーに対するアンケート調査で「あなたの運転技術は平均に比べてどう思うか?」という問いに7~8割が「上手いと思う」と答える。
ところが社会的地位が高い母集団、例えば大学教授に対する調査で「あなたの教え方は平均に比べてどう思うか?」という問いに何との94%が「上手いと思う」と目も当てられないくらいの結果になる。

これは脳とはこういうもので脳のクセを知らないで無意識に生きていることが罪作りであるということ。
これらの実験は「意識」が真実を反映しないことの確認。

無意識は意識でコントロールできない
池谷先生の「笑顔という魔法」という実験のことが中学1年生の教科書に載っているそうですが割愛致しますので興味のある方はぜひ調べてみてください。

「笑顔」は自分が楽しくなるだけじゃなく、相手を楽しくさせるだけじゃなくて周りにある楽しいものを見つけてくる力まで高めてくれる。
つまり全ての側面において脳は出力を重視するということ。
笑顔という「出力」を作ると内面が形成される。
「ガッツポーズ」するとバカみたいだけれどやる気が出る。

やる気の出し方
朝どうしても起きなければならないのに凄く眠い場合にどうすれば良いか?
起きて動いて歯を磨いたり、顔を洗ったりすると目が覚める。
体を動かすという出力をすることで脳も目覚める。
作業を開始することで脳が興奮してくる、この現象を「作業脳」

精神論大好き日本人は往々にして「やる気」を出すには「気合いだ」ということになりがち。
それもありだが、生物学的によりナチュラルにということは「始めちゃえ」ということ。

アルツハイマー病(以前はアルツハイマー型認知症と呼ばれていた)は遺伝性があまりない。
裏を返せば生活習慣が大切。
さて、一人で暮らしているお年寄りと、家族と仲良く暮らしているお年寄りとだはどっちがアルツハイマー病になり易いか?
後者、体を使っているかどうかがポイント。
一人暮らしは炊事掃除洗濯買い物全部自分でやるが、同居は「私たちがやるから」とやらせてもらえない。
家族と暮らしてはいけないとは言ってないので誤解しないで頂きたい。

例外もある、仲の悪い家族は大丈夫
お嫁さんがキツく「おばあちゃん、自分のことは自分でやってよね!」と言うような場合。
突き詰めると親孝行って何なのかがわからなくなる。

最近、国が言わなくなった「バリアフリー」
どうもバリアフリーにしたお宅でアルツハイマー病を量産しているらしい。
「おじいちゃん、段差があるから気を付けて」、これ、もの凄い大切な事。
身体が主導権を握っているから。

「心はどこにありますか?」と訊かれ脳研究者は口が裂けても「脳にある」とは言わない。
心は身体にある
前述の「ガッツポーズ」するとやる気が出る、やる気が上腕二頭筋にあるとしか言いようがない。

心は身体を含め周りの環境に散らばっている。
これが私たちの真の姿。

記憶は出力が効果的
ものを覚える、記憶するにはどうすれば良いか?
「スワヒリ語を覚えて下さい」という実験。
なぜスワヒリ語か?
スワヒリ語がペラペラな人はいないであろうから公平(になる)。
入力と出力、どっちを重視しながら勉強するかで結果が違ってくる。
前者重視は徹底的に繰り返し頭に叩き込む。
後者は覚えた知識を取り出してみる、例えば確認テストをする、人に話す、まとめ帳を作るといった思い出す、情報を引き出すというトレーニングをする。
結果は出力重視の後者の方が高い。
脳は入力よりも出力重視である。
昨年初めて脳はなぜ出力すると記憶が定着するのかが解明された。

記憶力は年齢と共には衰えない
記憶の話なら大体わかると言うとほぼ間違いなく出るワンパターンな質問。
「最近年取っちゃいまして何とかなりませんかね、記憶力衰えちゃって」、年を取ると記憶力が衰えたと感じることが気のせいだという4つの理由。

①「あれなんだっけ?あのひと誰だっけ?若い頃なら簡単に出てきてたのに」などなかなか思い出せない原因。
そもそも若い頃、それも小学生の頃知り合いは何人いましたか?
つまりは覚えておかなければならない人の数自体少なかった。

②「最近なかなか覚えられないんだよね、昔はもっと覚えられたのに」
学生時代は今より簡単に覚えられましたか?
若い頃試験前に復習したり単語帳作ったり勉強しましたよね?
その頃の中心は勉強が占め、現在よりは勉強していたはず。
中には「若い時に何にもやらなかったよ」という何の自慢にもならないことを言う方もいるが・・・。
例えば見たこともない英単語50個のリストを渡され「来週テストをしますので覚えてきなさい」と言われ、それを見てすぐに覚えられましたか?
覚えられなかったですよね、やはり単語帳を作って徹底的に繰り返し一生懸命覚えましたよね。
あの頃も覚えることは大変でそれに見合う努力をしていたはず。

社会人となり名刺交換し貰った名刺を覚えようと左上にパンチャーで穴をあけ単語帳のように朝昼晩と一日中見てる人はいませんよね。
仮にそうしたとしてもなかなか覚えられないのはそもそも覚えようとしていないということ。

③「すぐ忘れちゃうんだよね、つい最近会ったあの人の名前何だっけ?」
そもそも「つい最近」っていつですか?
「つい最近とは具体的に何日前のことですか?」と小学生にくとだいたい「3日前」と答え、「一週間」と答える子は非常に少ない。
また、「10日前」は皆無で、「10日前はつい最近ではないの?」と訊くと間違いなく「大昔」と答える。
大人の“つい最近”は10日前?、1か月前?、もっと行きますよね。
半年前のことでも平気で“つい最近”と言う。
つまり実際には速くなっている訳ではないが、時間の進み方が速く感じられるようになったから。

④「とはいっても度忘れが増えているような気がする」
年齢による度忘れの頻度の調査で、子供も大人も年配者も同じという結果、増えていない。
ただ子供と大人の度忘れで決定的な違いが1つだけある。
子供は度忘れしても「ああ、年取ったな」とは思わない

「年を取ると記憶力が衰える」と俗に言われているので気になりそう思ってしまう。
これが俗説であることを徹底的に証明した論文がある。
18~22歳の若者と60~74歳の年配者の集団に「心理テスト」と称し同じ問題をテストすると正解率はほとんど変わらない結果。
一方で別の18~22歳の若者と60~74歳の年配者の集団に「暗記テスト」と言い記憶力を測定しますと伝え「心理テスト」と称したものと全く同じテストをすると18~22歳の若者と比べ60~74歳の年配者の正解率は半減。
年を取っても記憶力は衰えない。

記憶を司るのは「海馬」、ここからシータ波(興味を持っている時に出る脳波)が出ている。
歩くことでたくさん出る。
それも初めて来た所を歩くことでものすごく強いシータ波が出るので積極的に散策して下さい

興味を持ってさえいれば若い人と同じ、興味を失ってしまえば一見記憶力が衰えたように感じるということは本当。

生きることに慣れてしまったから記憶力が衰えたように錯覚する。
これが5つめで真理だとも言われている。

マンネリ化がいかに怖いか?
灰色の点をじっと見つめていると見えなくなるという実験をしてわかり易く。
脳が存在を消してしまう。
私事で恐縮ですが結婚して14~5年経ちますが最近どうも妻の頭の中で私の存在が灰色の点に・・・、これ以上は切なくなるのでやめておきます。

遺伝子の可能性
人は99.9%同じ遺伝子を持っている。
ただ1個だけ違う、これを「スニップ(SNP)」という。
これからの社会の重要なキーワードになると思う。
変わり易いホットポイントではっきりとはわかっていないが数百万あるといわれ、これが世界中誰一人同じ人がいないという状況を作り出している。
皆固有のSNPを持っている。

今世界的にこれを調べて知っておこうという流れになっている。
これがわかれば将来の病気のリスクがわかる。
同じ癌でも何癌か、場合によっては100%の確率でなってしまうということがわかる。

今は病気になったら病院へ行くがこれはおかしい。
株価で考えればすぐわかる。
株価が下がってから株を一生懸命売っているのと同じ。
病気を治療する時代は終わった、これからは先手を打つ時代と言われだした。
間違いなく社会保障費の大幅な削減に繋がる。
現時点で全国民が遺伝子検査をすれば医療費が1/10になるという試算がある。
だからお医者さんは反対している。

特に日本は規制が厳しく遺伝子の分野では非常に遅れている。
一番進んでいるのはアメリカ、次は中国。
実際アメリカでは既に民間企業であるGoogle(正確には100%出資子会社の「23andMe」社)が$99で遺伝子検査を行っている。
自ら実際に遺伝子検査をされ、その結果を元に究極の個人情報を公開しながら講演。
病気のリスクで「痛風」とあったが調べなくてもわかっていた。
既に痛風だから。

遺伝子は★(1~4個)で表され、星の数で努力で何とかできるかどうかがわかる。
4個は100%努力しても無理、3個は70~80%、2個は半々と続く。

100万のSNPを調べてくれるが現在わかっているのは1万ぐらい。
ただし毎日のようにたくさん解明されていくので「今月わかったあなたの病気」いうメルマガが毎月届く。
がっかりしなくても大丈夫、「あなたがなりにくい病気」というメルマガも届きますから。
病気の遺伝子より健康の遺伝子の方がはるかに多い。
つまり遺伝子検査をして怖くなるよりは安心する要素の方が圧倒的に大きいし、どこに気を付ければ良いかがわかる。

病気以外のこともわかる。
親の出身地。
両親ともに静岡県出身とかではなく、500年前の出身地がわかる。
お酒に関しても飲むと赤くなるか、酒に強いか、酒が好きかがわかる。
ちなみに池谷先生曰く「赤くならずにお酒に強くお酒が大好きというアル中まっしぐら」だそうです。

「禿げるか」(★★★★)どうかは100%遺伝子で決まるので努力しても意味が無い。
ダイエット(★★★)も運動で痩せるか、食事制限でやせるかの2種類しかない。

「記憶力が良いか」、「失敗したら学習するか」、「浮気性か」(この遺伝子を持っていると離婚率が約7倍高い)など。

IQ(★★★)は複雑な知能なので1個では決まらずにいくつかの遺伝子で決まる。
池谷先生は普通くらい(だそう)。
偏差値でいうと53~55くらい。
対して奥様は全ての項目で上回る極上の遺伝子を持っていた。
それがわかった後の夫婦の関係がビミョーに。
奥さんに「あなた、その程度のIQで私に何言ってるの?」と言われ言うことをきいている内に夫婦喧嘩が無くなった。

池谷先生のマッスルパフォーマンス(筋肉の性能・★★★★)遺伝子はオリンピックの短距離走で金メダルを獲る人と同じだった。
今さら言われてもね。(自虐的に)
実は子供のころから足が速くずっとリレーの選手。
でもスポーツが好きではなく、部活、体育会系はとんでもないというタイプで吹奏楽部か帰宅部。
かたや友人で陸上部、朝練・夜錬し少しでも速く走りたいと血の滲むような訓練をしていて結果を出せないし私の方が速い。
これは相当難しい問題をはらんでいて、さてあなたが担任ならどちらを褒めるべきか?
「池谷褒めますか?褒められませんよね、たまたま親から良いものをプレゼントして貰っただけだし、この才能活かしていませんからね。」
じゃあ陸上部の友達褒めたら良いのか?
「本当は才能が無いのにね・・・、4つ星なんですよ。努力でひっくり返らないんですよ。にもかかわらずいつか速くなるかもしれないと青臭い夢を抱き、うだつの上がらない練習に時間を費やしている訳ですから。」
こちらも難しい。

遺伝子を調べてわかったこと、人は生まれながらにして不平等であるということ。

教育現場にいると平等でなければならないが、実は平等という権利は恐ろしく残酷で、もしそうあることができなかったとしたら全てその子の努力不足ということになってしまう。
例えば算数ができない子供がお母さんに叱られる、でも一生懸命やってできないとすると人口の10%は算数ができる遺伝子を持っていないのでそれに該当すると考えられる。
というかお母さんがその遺伝子を持っていないからこの子が持っていない。
そういうお母さんは学校や塾に電話して」ちゃんと教えているのか!」と文句を言う。

だから平等はやめましょう。
慶応義塾大学の教授が「差別を理由に遺伝的差異を認めたがらないとしたら、もし差があったら自分はそれを理由に差別するぞと宣言しているのと同じ」と言っている。
差がある事実を見ない、臭いものに蓋をするという態度自体が差別。
だから差があることを認めそこからスタートしましょう、と。

もう一つリチャード・ハーンスタイン氏の言葉。
「単に環境を平等にしただけではかえって遺伝的な差異が顕在化する」
これが今の学校教育。

「あなたは平均以上か」という問いに多くの人が「はい」と答えるダメな社会の大きな一つの問題点かもしれないと現在の教育に提言され締め括られた。

知らなかったこと、難しいことをわかり易く、驚きの内容や実験での証明、まさに目から鱗状態、さらに笑わせ方が非常に巧く、オチがちゃんとある見事な“論理的”構成でもっともっと聴きたいと思わせる素晴らしい内容の講演でした。
最近はTVにもちょくちょく出演され知名度も急上昇中ですから講演料が上昇前の今がベストな依頼時だと思います。
必ずご期待にそえる講師です。

余談ですが「ガンバレ」のサブリミナル映像を当社社員のPCに組み込めるソフトはありませんかね?と先生に伺いましたら苦笑しておられました。
きっと社長はみんな欲しいと思うだろうなあ・・・、法に触れなければ。

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