1月21日(木)に都内ホテルで弊社新規のお客様ご主催講演会で片山善博先生の「真の『地方再生』と日本の将来」というテーマでの講演でした。
お客様は観光業に従事されておられる経営者の方々でした。
片山先生は余裕を持って会場入りして下さり控室で主催者のトップの方々との様々な会話の中で共通のお知り合いで片山先生の同級生の方から子供時代の先生のあだ名が「おっちん」で、いつも成績がダントツの一番でそこから落ちたことが無いのでそう呼ばれていたとお聞きになられたというエピソードが、そのトップの方から紹介され盛り上がりました。
さて、講演は現在の日本が抱える問題点から入られました。
人口減少社会と「消滅可能性自治体」
特に地方は人口減少⇒成人前後に都会へ流出というダブルパンチでこのまま何も手を打たないと2040年頃には約半分の自治体が消滅すると言われ「消滅可能性自治体」という実名を挙げてのレポートが出された。
従って安倍政権の“地方創生”という政策は若い人たちに地方へ残ってもらうことでの地方再生が狙いである。
が、今のままでは上手くいかないのではないかという危惧を持っており、何とかできないかとやきもきしている。
また、20代の頃から仲良くしている石破茂氏が担当大臣なので上手くいって欲しいと願ってもいる。
地方の活力が減退するのはなぜか
地方経済停滞の根本的原因
・若者の流出
・雇用が少ない
・下請け経済構造になっているので収益性が低い
・地域のお金の流出、特にエネルギー支出が大きい
地域の外へお金が出て行かないようにしなければならない。
国の政策と地方の課題との間のズレ
地方創生の目玉としてほとんどすべての自治体が発行したその地域でしか使えない商品券。
これではお金の流出も止められないし雇用も増えない。
全く効果が無いとは言えないが地方創生という観点から見れば少しピントがズレている。
お金の流出の最大要因であるエネルギー支出を何とかする為にどうすれば良いか?
耐乏生活を送れば良いということではなく、自前でエネルギーを作る。
鳥取県知事時代には当時はまだ珍しかった風力発電施設を作り、長い目で見て少しずつ「ちりも積もれば」ということでやってきた。
本来はそういう所に地方創生の予算を使うべきだったのではないかと思う。
地方の再生には何が必要か
企業誘致は「花嫁一人に婿十人」でなかなか難しい。
特産品開発も一気に爆発的に売れてということは滅多にない。
そうした中では、やはり“観光”が大変重要になるのではないか。
地方の再生と観光振興
観光とは「人がお金を持って来てくれる」こと。
貿易でいう所の輸出と同じ経済効果がある。
これを盛んにすることは地方創生において地域にとっても大変有効である。
「観光」は裾野の広い総合産業。
これを活発にすることで地域に雇用も生まれ活性化される。
ただし日本中で同じように行われるので良い意味で地域間競争に勝つよう努力し、全体として需要を増やし底上げしていかなければならない。
地方自治をライフワークにし、知事職を離れた現在は大学で「地方自治論」の教鞭をとり地域振興や観光行政を注意深く全国的な視点で見ていると「観光」という面でいくつか気付くことがある。
地域イメージの良し悪しがあること。
イメージの良い所に共通していると思うことは文化、歴史、伝統を大切にしているという印象を受ける所。
知事時代にお隣の島根県を見て文化、歴史、伝統が重厚だなあと常に思いそれを意識していた。
地方自治をやっていると県の名前と県庁所在地の名前が一致しない所が結構評判が良いことに気付く。
少し話は逸れるが県の名前がどのように決まったか?
実はルールめいたものがある。
例外もあるが県庁所在都市と県名が一致している所は元お城があった所に県庁を置いてお城があった都市の名前を県名にした。
鳥取は鳥取城があった鳥取市の鳥取を県名にした。
しかしお隣の島根県の県庁所在地は松江市、松江県となぜ言わなかったか?
地方自治の初っ端、端的に言うと薩長藩閥政府の一種の嫌がらせだった。
どういうことか?
戊辰戦争の時のB級戦犯という扱いをされそのようになった。
さらに会津若松や弘前、米沢のようにいわばA級戦犯はお城のある所に県庁を置いてもらえなかった。
これらの県は県庁所在都市と県名が一致しているので一見ルールに則っているように見えるが、実はお城があった所に県庁を置いていない。
ともあれ、先般のような扱いを受けた都市ほど、それをばねにして文化、歴史、伝統を大事にして地域の価値を守っていこうという気概があったのかなと思う。
鳥取城は明治維新の時に解体され薪燃料として売られたそうたが、松江城は残って国宝になった。
こういう歴史の違いが観光という面でも影響しているのかなと思う。
やはり文化、歴史、伝統は地域の財産として重要。
新しいものを追いかけるだけで古いものを捨てていくことは文化的に根無し草になってしまうことと同じ。
各県の観光は商工労働行政であることが多い。
ひと昔前の観光行政は旅館組合の相手をしていて、観光課長の最大の仕事は旅館組合の組合長の機嫌を損ねないことだった時期があった。
つまり業界行政だった。
しかし観光は業界を発展させることにあるのではなく、多くの人に来て頂き楽しんでもらうのが究極の目的。
それにつれて業界にも活気が出てくる。
鳥取では「文化観光部」を作り文化コンテンツとリンクさせる形で文化的知的財産を外に発信させる人たちの集団に生まれ変わるように組織改正を行った。
地方の再生と自治体の独立
お集りの皆さんは、日ごろ気がつくことをぜひ最寄りの自治体に積極的に提言したり、文句を言ったりしてもよろしいのではないでしょうか。
自治体の改革で一番肝心なのは地方議会の改革。
アメリカのように議会が市民の広場のようになり地域の住民や企業・団体が集まり意見が結集されるようなものにしなければならない、と締め括られた。
硬軟ミックスだが「硬」の部分もわかり易くお話しされ、とても内容が濃いけれども授業のようではなく、聴衆を飽きさせずに「なるほど」と思わせ、少し笑いもありお客様にピッタリのカスタマイズして下さった講演で大変主催者にも感謝され大成功でした。
さすがとしか言いようがありません。
講演終了後は大学へ急ぎ戻られるご予定でしたが時間ギリギリまで控室で主催者の皆様とご歓談下さいました。
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